栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:JAMA-IM cross sectional 進行期認知症患者の心房細動に対する抗凝固療法処方の実態

   

はじめに

 久々にブログ書きます。実臨床から生まれる疑問は重要ですよね。先日は抗凝固薬のUnderuseの話題も出ていましたが、一方でOveruseも難しいという話題です。この辺りって結局バランスの問題なのですが・・・
 背景知識としては、認知症患者では約20%に心房細動を合併していることが分かってきています。そして、多くの患者は、合併症を多く抱えているため、抗凝固見積りスコアであるCHADS2スコアは当然高くなり、ほとんど全てでの方が抗凝固療法の適応になることが知られています。

 一方、進行期認知症患者はADLが低下し余命も限られてくることが知られています。さて、どうしたものか?というテーマです。 

紹介論文

今回取り上げるのは・・・JAMA internal medicineから。
タイトルは「進行期認知症患者の心房細動に対する抗凝固療法」です。

jamanetwork.com


 

論文の背景

・心房細動患者に対する抗凝固療法のunderuseは高齢者によって顕著と言われています。以下の研究では34%。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov


・日本からも高齢者に対する抗凝固療法のFushimi registryから、Underuseとunderdoseが指摘されています。

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/circ.128.suppl_22.A12249

論文の概要

【論文のPECO】

・P:2014-2017年にメディケア使用をしている介護施設に入居している65歳以上の進行期認知症患者
 心房細動を合併して、CHADS2 スコア≧2点
・E/C:
・O:
 ①抗凝固療法の有無
 ②抗凝固療法使用に関連する因子
・T:横断研究
・結果:
 □平均年齢 87.5歳、男性 31.8%、15217人の施設入所者
 □抗凝固療法実施患者数 5033人(33.1%)

・多変量解析:
【抗凝固療法使用に関連する因子】
 □CHADS2スコア >7点 OR 1.38(1.23-1.54)
 □ATRIAスコア   >7点 OR 1.25(1.13-1.39)
 □施設入所から1年以上経過 OR 2.68(2.48-2.89)
 □メディケイド非加入     OR 1.59(1.45-1.69)
 □体重減少          OR 1.09(1.01-1.18)
 □褥瘡            OR 1.37(1.27-1.48)
 □嚥下障害          OR 1.12(1.02-1.22)


【抗凝固療法不使用に関連する因子】
 □高齢 80-89歳    OR 0.82(0.74-0.92)
 □高齢 90歳以上      OR 0.59(0.52-0.66) 
 □男性         OR 0.88(0.81-0.95)
 □抑制必要       OR 0.79(0.66-0.95)
 □ホスピス入所     OR 0.76(0.70-0.83)

思うこと

 高齢者の抗凝固療法を巡る問題はなかなか難しいです。また、今回不思議だったのは、本来薬をやめる方向に働くであろう、ATRIAスコア高値(出血リスクが高い)や体重減少・褥瘡・嚥下障害などが抗凝固療法の処方と関連する因子だったということです。

 SDMを実践するためにも、適切な情報やエビデンスが必要になります。

 

・進行期認知症患者であっても米国では1/3が亡くなるまで抗凝固内服している
・適切にやめるためのガイドが必要

論文:BMJ 2020年のCOVID-19流行期における29の高所得国の超過死亡〜Time series analysis〜

   

はじめに

 超過死亡の話題はあちこちで出ていますが、今回はBMJに高所得国における2020年の超過死亡についての論文が報告されていました。日本でも超過死亡の話題は出ていましたが、少なくとも年明けくらいまでは超過死亡は欧米と比較してそれほど認められていなかったと理解しています。
 第4波でどうなったかは分かりませんが・・・

www.niid.go.jp


 

紹介論文

今回取り上げるのは・・・BMJから。
タイトルは「2020年のCOVID-19流行期における29の高所得国の超過死亡」です。

www.bmj.com


 

論文の背景

・毎日の様に報告される死亡者数については、パンデミック時期にはセンセーショナルではあるものの、国や地域毎にかなり広範な異質性が存在します。
・実際、COVID-19に対する様々な対策の影響で、健康的には良くなったものも中にはあり、総死亡数自体は減ると言うことも考えられなくはないです。インフルエンザとかは良い例ですね。
・COVID-19の総合的な影響は例年のベースラインと予測死亡数の差として計算される「過剰死亡」を測定する必要があります。
・今回は、OECD加盟29ヵ国の週毎の死亡率データの時系列解析が行われています。期間は2016-2020年となっています。

論文の概要

【論文のPECO】

・P:2016-2020年の死亡率データベースの短期死亡率変動データを年齢と性別で調整を行った
・E/C:OECD加盟29ヵ国(オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、イングランドとウェールズ、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イスラエル、イタリア、ラトビア、リトアニア、オランダ、ニュージーランド、北アイルランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スコットランド、スロバキア、スロベニア、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、米国)
 介入としてCOVID-19パンデミックと関連する政策措置
・O:2020年の週毎の過剰死亡(年齢:0-14歳、15-64歳、65-74歳、75-84歳、85歳以上)
・T:


時系列研究
・結果:
 □超過死亡が最も多かったのは米国で45万8000人だった
 □超過死亡が最も少なかったのはニュージーランドで-2500人だった
 □ほとんどの国では女性よりも男性の過剰死亡の方がやや多い結果


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 □超過死亡のほとんどは75歳以上に集中
 □15歳未満の超過死亡はほぼ見られなかった

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思うこと

 日本のデータがなかったのは残念ですが、日本より圧倒的に対策がうまくいっている韓国でも4500人程度の超過死亡があるので、おそらく日本も超過死亡は出てくるのだと思います。

 過剰死亡の全てがCOVID-19とは言えませんが、大きな影響を与えていることは間違いないでしょう

 年齢的な考察も実感もてますし、死亡発生と季節性は全く関係ない様子なので、インフルエンザの様な季節性流行(鎮下)は期待できそうにないですね。

 

・COVID-19流行下においては全世界的に超過死亡が見られている
・全体としては男性に多い傾向があり、年齢の影響が大きい