論文ざっくりななめ読み。
JAMAヒトマズまとめてご紹介していきます!
- 重症COVID-19患者に対するHigh Flow nasalと通常酸素投与療法の比較
- 脳卒中後の卵円孔開存に対するデバイス閉鎖の治療効果 -RCTの個別データ分析-
- 院外心停止患者に対するカルシウム静注の効果
重症COVID-19患者に対するHigh Flow nasalと通常酸素投与療法の比較
COVID-19が一段落ついている段階で色々エビデンス確認していきます。今回は、途中からかなりあちこちで使われるようになった、高流量酸素療法であるHigh Flow nasalについてです。
通常の酸素投与ではなく高流量療法を行うことで、人工呼吸器装着や臨床的改善までの時間回復につながるかどうか?が今回の臨床疑問です。
P:コロンビアの3つの病院・ICU入室中のCOVID-19重症患者220人
年齢中央値 60歳、女性 32.7%、PF ratio<200
I:高流量酸素療法(Nasal High Flow) 109人
C:通常酸素療法 111人
O:挿管と27日までの臨床的回復(7段階評価)
T:ランダム化比較試験/非盲検
結果:
□患者群を見ると、ステロイド使用者が10%未満
□発症からランダム化までが10日、入院して1非で介入
□7段階スコアの3が20%、4が80%
□28日以内の挿管率:高流量酸素群 34.3% vs 通常酸素群 51.0%
OR 0.62[0.39-0.96]
□28日以内の臨床的改善:高流量酸素群 34.3% vs 通常酸素群 51.0%
OR 1.39[1.00-1.92]
⇒有意に呼吸器装着を減らして改善を増やす
介入の性質上盲検化は難しいですね。シングルセンターでの結果なので、このまま外挿して良いかは分かりませんが、少なくともかなりポジティブな結果がでRCTが一本あるのは大事かなと思いました。
脳卒中後の卵円孔開存に対するデバイス閉鎖の治療効果 -RCTの個別データ分析-
卵円孔開存はなかなか悩ましい問題で、過去にも多くの研究が報告されています。そもそも18-60歳の脳梗塞患者全体の10%を占めるとされています。PFO関連の脳卒中であれば、PFO閉鎖の効果があるとされていますが、この辺りが実はなかなか悩ましい問題です。
デバイス閉鎖と内科的治療単独を比較したRCTは6件あって、メタ解析では閉鎖術の方が脳梗塞再発を減らすとされていますが、絶対リスク減少は非常に低く、デバイス閉鎖のリスク・ベネフィットも含めて十分検討する必要があります。
今回はRCTの個人データをプール分析することで、患者層の不均一性を考慮して本当に効果のある患者層を明らかにするために分析が行われました。
P:PFO閉鎖と内科的治療を比較した6件(2000-2017年)のRCTに参加した3740人
I:PFO閉鎖+内科治療群 1983人
C:内科治療のみ群 2530人
O:脳梗塞の発症
T:RCTのプール分析
結果:
□患者データ
・追跡中央機関は57か月(5年弱)
・121件の脳梗塞が発症
□脳梗塞発症:
・PFO閉鎖+内科治療群 1.09%[0.88-1.36%]
・内科治療のみ群 0.47%[0.35-0.65%] HR 0.41[0.28-0.60]
□奇異性塞栓リスクスコア(RoPE)とPASCAL分類(PFO関連脳卒中可能性システム)は、それぞれPFOが脳卒中リスクとなる可能性が高い群の方が脳卒中発症が多かった。
□デバイス関連の心房細動は、PASCALカテゴリの可能性が低い群で 4.41%、可能性がある群で 1.53%、可能性が高い群で 0.65%だった
PFOが脳卒中の原因かどうかはリスク層別化によって異なることが分かりますね。少なくとも見つけたらすぐに治療するというよりは層別化することの重要性ですね。
【RoPEスコア(10点満点)】
・高血圧、糖尿病、脳梗塞/TIA、喫煙、画像での皮質梗塞(各1点)
・年齢(18-29歳:5点、30-39歳:4点、40-49歳:3点、50-59歳:2点、60-69歳:1点、70歳以上:0点)
⇒7点以上を高リスク
【PASCAL分類】
RoPEスコアとPFOの特徴(シャントの大きさ/心房中隔動脈瘤)で分類
RoPE7点以上+PFO特徴がリスクありではProbable
RoPE7点以上+PFO特徴はリスクなしでPossible
RoPE7点未満+PFO特徴はリスクありでPossible
RoPE7点未満+PFO特徴はリスクなしでUnlikely
ひとまず、こういったスコアは使ってみると良いかもしれません。
院外心停止患者に対するカルシウム静注の効果
この背景は知らなかったのですが、カルシウム投与が院外心停止によいかもという仮説があるみたいですね。病態生理的には、陽性変力作用と昇圧作用があることは基礎データ的には分かっています。
過去のRCTでは心拍再開の増加は認められなかったのですが、2つの小さなRCTであり大規模な検証が必要とされています。
P:2020-2021年のデンマーク地域の院外心停止患者397人
E:塩化カルシウム静注 5mmol 群 197人
C:生理食塩水静注群 200人
O:ROSC
T:ランダム化比較試験/中間解析で早期中止
結果:
□事前に設定された中間解析に基づいて、静注カルシウムの害がある可能性があり試験を早期に中止した
□平均年齢 68歳、女性 29%
□ROSC(自発循環の持続的回復):プライマリアウトカム
生理食塩水群 53人(27%)vs 静注カルシウム群 37人(19%)RR 0.72[0.49-1.03]
□30日後の神経予後良好生存:
生理食塩水群 15人(7.6%)vs 静注カルシウム群 7人(3.6%)RR 0.48[0.20-1.12]
□カルシウム静注群は有意に高カルシウム血症を来していた。
ということで、心肺停止にカルシウム静注を施行すると害が増えそうですね・・・