栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:JAMA-IM Retrocohort COVID-19における院内心停止の臨床転帰

COVID-19患者さんの死亡率は各国によって大きく異なりますが、COVID-19患者急変による院内心停止の予後を見た研究です。
日本では重症管理をしている施設でお役に立つ情報かもしれません。

とはいえ、かなり厳しい結果・・・

COVID-19における院内心停止の臨床転帰
Clinical Outcomes of In-Hospital Cardiac Arrest in COVID-19

JAMA Internal Medicine Published online September 28, 2020

【背景】
 COVID-19が発生する前は、院内心停止(IHCA)患者の25%が生存退院し、81%の症例で初期リズムがショック適応ではなかった。COVID-19
により多くの死者が出たにもかかわらず、米国内のCOVID-19によるIHCAに関する情報が不足している。
【方法】
 2020年3月15日から4月3日までの間に、COVID-19と診断された1309人の患者がBeaumont Health病院(Royal Oak、Michigan)に入院した。このグループから、心停止のために心肺蘇生(CPR)を受けた患者を特定した。除外基準は、18歳未満、DNRステータス、およびcomfort careまたはホスピスケア登録。
 主要評価項目は、初期の心停止リズム、自発循環の回復までの時間(ROSC)、および退院までの全生存期間とした。パンデミック状態だったため、施設内審査委員会の承認を与え、インフォームドコンセントを放棄した。
【結果】
 COVID-19で入院した1309人の患者のうち、60人(4.6%)がIHCAとなりCPRを受けた。6人の患者はCPRの記述が不十分だったため除外され、54人が解析対象となった。初期リズムは52人の患者(96.3%)でショック不要、44人(81.5%)がPEAで、8人(14.8%)がAsystoleだった。2人の患者(3.7%)はPulseless VTで、心室細動を発症した患者はいなかった。
 ROSCは29人の患者(53.7%)で達成された。ROSCを達成するための時間の中央値は8分(4-10分)。ROSCを達成した29人の患者のうち15人(51.7%)は、蘇生しないようにコードを変更し、14人の患者(48.3%)は再コード化され、追加のCPRを受け死亡した。
 入院から心停止までの期間の中央値は8日(4-12日)だった。CPRの全体的な中央値は10分(7-20分)だった。退院までの生存率は54人中0人(95%CI、0-6.6)だった。年齢の中央値は61.5歳で、ほとんどの患者はアフリカ系アメリカ人だった。多くの患者は、肥満、高血圧、または糖尿病を患っていた。心停止の時点で、43人の患者(79%)が人工呼吸器、18人(33%)の腎代替療法、および25人(46.3%)の昇圧剤のサポートを受けていた。患者の人口統計学的特徴、併存症、およびCPRの特徴は以下。

【結論】
 COVID-19による院内心停止ではショック不要が多く、半数でROSC達成したものの生存率は著しく低かった

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【批判的吟味】
・論文のPECOは
P:COVID-19の院内心停止患者
E/C:なし
O:初期の心停止リズム、自発循環の回復までの時間(ROSC)、および退院までの全生存期間
・今回CPR後の死亡率は100%。
・29人の患者(53.7%)がROSCを達成したにもかかわらず、退院まで生き残った患者はいなかった。
・もともとCOVID-19発生前には、退院するまでの全生存率は25%で、ショック不可能なリズムの患者では11%だった。
・今回のCOVID-19患者では、多くが機械的人工呼吸、腎代替療法、または昇圧剤のサポートを受けており、これらはすべて、IHCA後の転帰不良と関連していることが以前に示されていた。
・蘇生プロセスがエアロゾルを生成し、医療従事者がウイルスに感染するリスクが高くなる可能性があるため、この患者群で長期CPRを実施することのリスクと利点をさらに調査する必要がある
・アフリカ系アメリカ人についての言及はありませんでしたが・・・

【個人的な意見】
 やはりかなり厳しい結果でした。ROSCはしても最終的に生存退院は厳しいという結果は十分考慮しておく必要がありますね。
 色々今後のための検証が必要です。

✓ COVID-19患者の院内心停止は生存率は著しく低い

論文:JAMA RCT 中等度のCOVID-19肺炎患者に対するレムデシビル治療の効果

さてさて、COVID-19の薬物治療です。
この半年の間様々な治療薬が出てきましたが、とりあえず2020年9月時点で信頼性高く使えそうなのは中等症以上の肺炎患者に対するデキサメタゾンくらいだなあというのが個人的な見解です。

次に期待できそうなのがレムデシビルなのですが、今回はJAMAにCOID-19肺炎で中等症以上の患者さんに対するレムデシビルのRCTが報告されています。

Introductionから現状の情報共有ですが、現時点で全世界の感染者は2000万人を超えたんですねえ・・・米国では16万3000人が亡くなり、全世界的にも73万人が亡くなっている。このデータを改めて実感するに、ホント大変な感染症という気持ちを新たにします。
現状では無症状から軽症は医学的介入なしでほぼ回復するものの、高齢者や高血圧・糖尿病合併患者や、肥満患者では重症化リスクが高くなります。

レムデシビルについては5月頃に青島先生とゆる読みでLancetのRCTを紹介していました。これは中国のRCTでサンプルサイズ不足でしたが有意差なし

www.youtube.com


その後NEJMに報告されたACTT  trialではレムデシビル群が臨床的な改善が早い結果(11日 vs 15日)で、生存率の改善は利益が見られる傾向があったが、有意差はついていないという結果でした。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov


その後、更にもう一本NEJMに重症COVID-19患者だが人工呼吸器管理を必要としない患者に対するRCTでは5日コース・10日コースを比較して優位差なしとされましたが、これはなんとプラセボ群がないので比較できない結果・・・これ意味あるか?という印象。

ということで、現状RCT的には一勝一敗なのですが、今回はどうかなあ?という研究。個人的にはおそらく効果のある一群はあると思うけど、それほど不偏性の高い効果がある薬剤ではないだろうなあという印象ではあります。さて、結果はいかに!?

 

中等度のCOVID-19肺炎患者に対するレムデシビル治療の効果
Effect of Remdesivir vs Standard Care on Clinical Status at 11 Days in Patients With Moderate COVID-19

JAMA. 2020;324(11):1048-1057. doi:10.1001/jama.2020.16349 Published online August 21, 2020.

【背景】
 レムデシビルは、重度のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の患者を対象としたプラセボ対照試験で臨床的有益性を示したが、中等症患者におけるその効果は不明である。
【目的】
 レムデシビル投与5日群と10日群を標準治療群と比較し、治療開始後11日目の臨床状態を評価した
【デザイン・セッティング・患者】
 SARS-CoV-2感染が確定された中等症COVID-19肺炎(肺浸潤と室内空気酸素飽和度> 94%)の入院患者のランダム化オープンラベル試験で、米国・ヨーロッパ・アジアの105病院で、2020年3月15日から2020年4月18日まで登録された。最終フォローアップは2020年5月20日。
【介入】
 患者は1:1:1の比率で無作為化され、レムデシビル10日間群(n = 197)、レムデシビル5日間群(n = 199)、標準治療群(n = 200)に割り付けられた。レンデシビルは、1日目に200mg静脈内投与され、その後100 mg /日が投与された。
【メインアウトカム】
 メインアウトカムは、11日目の臨床状態で、死亡(カテゴリー1)から退院(カテゴリー7)までの7段階の臨床状態評価スケールとした。レムデシビル治療群と標準治療の効果は、比例オッズモデルを使用して計算され、オッズ比として表された。オッズ比が1より大きい場合は、レムデシビル群と標準治療群のカテゴリー7への臨床状態分布の違いを示している。
【結果】
 無作為化された596人の患者のうち、584人が研究を開始し、レムデシビルまたは継続的な標準治療を受けた。患者の中央年齢は57歳 [46-66歳]、女性 227人 [39%]、心血管疾患 56%、高血圧 42%、糖尿病 40%で533人(91%)が試験を完了した。治療期間の中央値は、5日間のレムデシビル群の患者では5日間、10日間のレムデシビル群の患者では6日間だった。11日目に、5日間のレムデシビル群患者は、標準的なケアを受けている患者よりも統計的に有意に高い臨床状態分布だった(OR 1.65[95%CI 1.09-2.48)。10日間のレムデシビル群と標準治療群の間の11日目の臨床状態分布は有意差がなかった。
 死亡者は28日目までに9人。5日レムデシビル群で2人(1%)、10日レムデシビル群で3人(2%)、標準治療群で4人(2%)。その他の有害事象として、悪心(10%対3%)、低カリウム血症(6%対2%)、および頭痛(5%対3%)は、標準治療と比較して、レムデシビル治療を受けた患者の方が多かった。

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(本文より引用)

【結論】
 中等症COVID-19肺炎患者のうち、レムデシビル10日群に割り付けられた患者は、治療開始後11日で標準治療と比較して臨床状態に統計的に有意な差は認めなかった。レムデシビル5日群では、標準的なケアと比較して臨床状態に統計的に有意な差があったが、その差は臨床的に重要ではなかった

【批判的吟味
・論文のPICOは
P:中等症COVID-19肺炎の入院患者(浸潤影あり、SpO2>94%)
I:①レムデシビル 5日、②レムデシビル 10日
C:標準治療群
O:11日の臨床状態 7段階
T:ランダム化比較試験/オープンラベル
・患者背景を見るとアジア人も20%弱は含まれています。
・治療開始前の臨床状態は5が最も多く80%以上で、これは酸素を必要としない入院している患者で何かしらの医学的ケアが必要な状態ということになります。
・併用薬としてはステロイドが15-19%でしたが、ヒドロキシクロロキンの使用量が標準治療群で45%と格段に高いのが気になりました。これはカレトラⓇも同様で、他の薬剤が足を引っ張ってないかなあ?と。
・オープンラベルなので、実はプラセボとの比較ではなく他薬剤との比較になっている可能性がありますよね。
・あとは10日群の治療を受けた日数が6日だったことと、その10日群が何故か有意差がつかなかったこと。少なくとも用量依存性や再現性が若干乏しいといえます。
・特に死亡については、この重症度の患者群ではほとんど起こらないアウトカムであり、アウトカム発生頻度があまりに少ないので、これだけでは判断は難しいです。

【個人的な意見】
 おそらく効果はあるんでしょうけれど、この重症度の群には使用しなくて良いというのが私も同じ見解です。比較的冷静な判断がなされているなあと思います。レムデシビルの供給の問題もあり、当院としては、今のところ選択肢にはデカドロンがあがるくらいでしょうか。

✓ 中等症のCOVID-19肺炎入院患者に対するレムデシビルの効果は5日投与群であるかもしれないが、その効果は非常に小さい

CMAJ 症例:58歳女性 発熱・皮疹

この皮疹は一度見てからは一発診断できるようにはなりました。
とはいえ、もっと奥は深いのでしょうけれど・・・
ゲシュタルト大事です。ただ、造影剤かあ・・・

症例:58歳女性 発熱・皮疹
CMAJ 2020 September 21;192:E1097. doi: 10.1503/cmaj.200364

 急性骨髄性白血病と診断された58歳女性が、胸部造影CT検査を受け、80 mLの静脈内造影剤(ヨード造影剤)を使用した。12時間後、患者は40.1ºCとなり、顔面・体幹・四肢にびまん性紅斑と浮腫を特徴とする発疹が出現した。膿疱性病変も多発したが、粘膜病変はなし(図)。患者は10年前に造影CT検査を行ったことがあったが、その際に副作用は認められなかった。
 血液検査では、好中球増多(12.7×10 9 / L)、クレアチニン上昇(1.92 mmol / dL)、好酸球増加症なし、血液培養陰性だった。

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(本文より引用)

質問. 診断は?

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