栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文ななめ読み:JAMA 10/5 死戦期喘鳴にスコポラミン/COPD増悪患者のVTEと予後/心血管リスク因子の傾向/薬物有害事象による救急外来受診

論文ざっくりななめ読み。印象ざっくりでご紹介していきます!
詳細は是非原文をお読みください!

 

jamanetwork.com

終末期患者の死戦期喘鳴に対する予防的なスコポラミン皮下注射の効果:SILENCE trial

 緩和ケア領域でガイドラインなどには載っているけどあまり質の高いエビデンスが不十分だったシリーズ!JAMAにRCTで掲載されていましたね。

 死戦期喘鳴は報告によってまちまちですが、看取り患者の12-92%で見られるとも言われています。多くの場合、患者自身は意識が落ちている時期に起こるのでどこまで問題があるかは分からないけれど、家族にとってはかなり不快感を感じていて、大丈夫ですよという説明だけでは不十分ではないかというのが背景です。いくつかのガイドラインが抗コリン薬使用を勧めているものの過去のRCTでは効果が実証されていませんでした。
  
 今回の試験の売りは、ガラガラ言い出してからじゃ遅い(粘液産生減少効果だから、粘液が出てからじゃ効かん!)。症状が出てくる前に予防的使用の方が良いんじゃないか?というのがポイントです。

P:ホスピスに入院した平均余命3日以上の患者162人
  平均 75-78歳、男性 42-46%、悪性腫瘍 84-89%
I:スコポラミン皮下注射 20mg 4回/日
C:プラセボ
O:グレード2以上の死戦期喘鳴
T:ランダム比較試験/オランダ6箇所のホスピス
結果:
 死戦期喘鳴の発生率は、
  スコポラミン群10人(13%)vs プラセボ群 21人(27%)
  絶対差 14%、HR 0.44[0.20-0.92]
 有害事象の発生率は、
 ①落ち着きなさ:スコポラミン群 28% vs プラセボ群 23% 
 ②口渇    :スコポラミン群 10% vs プラセボ群 15%
 ①尿閉    :スコポラミン群 23% vs プラセボ群 17%   

全体の10%しか含まれず代表性が妥当か微妙なこと、呼吸器感染症は除外されていること、単一施設での小規模試験であることなどが悩ましいところです。
個人的には確かに効果はあるけど、誰に実施するか(選択基準が難しい)、副作用が実はそれほど少なくはないかもというのが悩ましいところです。

 

COPD増悪で入院した患者で肺血栓塞栓症を診断することと患者予後:SLICE trial

 今週JAMAおもしろ!よくCOPD増悪の背景にVTEがあるよ〜みたいな指導医コメントがあるわけですが、なんだかそれによってじゃんじゃん造影CTが撮られるの微妙〜みたいな指導医ジレンマってありますよね。そもそも合併なのか誤診なのかといった問題もあります。米国でもCOPD増悪患者に造影CTがどんどん使われていると言う実態があるようです。

 一方で、造影CT自体のデメリットがそれなりにあること、その後の抗凝固療法戦略が行われた場合のリスクなどもあります。全ての検査がそうですが、本来はそのプラクティスを行うことで、患者予後を改善するか?という視点は重要です。臨床的に診断・治療することのメリットが少ない病態を見つけに行くかどうかは十分話し合う必要があります。ということで、その血栓見つけにいくプラクティスってホントに意味あんの?というテーマです。

P:スペイン18病院にCOPD増悪で入院した746人
  平均70歳、女性 26%、現喫煙 30-32%、LAMA/LABA 90%弱
  Wells score low 44%、intermediate 56%、high 0.3%
I:PE診断積極的なアルゴリズム(d-dimer+造影CT)
C:通常ケア
O:非致死的な症候性VTE、COPD再入院、90日以内死亡の複合アウトカム
T:ランダム比較試験
結果:
 複合アウトカム発生率は、
  PE精査群 110人(29.7%)vs 通常ケア群 107人(29.2%)
  RR 1.02[0.82-1.28]
 d-dimerが370人ほぼ全例で行われ、181人で造影CTが施行され、16人(8.8%)で肺血栓塞栓症が発見された。7人が中枢、7人が分枝型だった。

 今回のPE頻度は過去の研究とも類似していて、介入群全体では5%未満でした。なかなか難しいですね。少なくとも頑張って肺塞栓症を見つけに行くことの明確なメリットが少ないと言うことでしょうか。
 どの程度のPEを見逃して良いのか?みたいな話題にもなるんでしょうかね・・・大出血頻度はあまり変わらなかったみたいです。あとはフォローアップ期間の問題、非盲検の研究であることなどは突っ込みどころですね。
 個人的には「COPD増悪でルーチンにスクリーニング戦略を発動する」はなしで良いと思っています。あくまでVTEを疑ったらアクションするということでしょうね。
MRI・CTスキャンのイラスト(健康診断)

心血管リスク因子の傾向〜人種・社会経済的背景〜:1999-2018年

 この手の話題は人種・社会経済的背景による違いという切り口の論文がだいぶ増えてきています。COVID-19でもこの辺りはトピックですよね。
 米国では心血管疾患死亡が2010年以降横ばいだけれど、人種差・社会経済的背景による差が大きいというのが背景としてある中で、1999-2018年の20年間でどう変わったか?を見ています。
 こういった研究は全体的に眺めるというのが興味深いので、全文読めるかたは是非Figure 1-4をざっくり眺めてもらうとイメージが湧くかなと思います。いくつか気になる点ですが・・・

・10年後のASCVD riskについては、明らかに男性の方が高い
・喫煙者は全体として減り、コレステロールも低下しているが、BMIやHbA1cは経年的に増えている
・人種差として、アジア人は圧倒的にBMIが低く、喫煙歴は低い。10年ASCVD riskは黒人が有意に高い結果で、血圧コントロール不良と関係してそう
・学歴では、大学卒業者とそれ以外で差が大きく、大学卒業者はBMIや血圧・HbA1c・喫煙率が低く、ASCVD riskが少ない
・収入の差は煙草・ASCVD riskで特に顕著。

 

薬剤有害事象による救急外来受診:2017-2019年

 これも時々見かけるスタイルの研究ですね。データとしては、2017-2019年の間に米国60箇所の救急外来の横断的全国調査が行われていて、救急来受診に関係する薬剤についてのデータが収集されています。かなり細かい分析がされていて、年齢毎・使用目的なども細かく検討されています。

 年齢毎のベスト3を紹介したいと思います!(※実際にはベスト10が出ています)

5歳未満:①アモキシシリン、②アセトアミノフェン、③イブプロフェン
5−14歳:①アモキシシリン、②イブプロフェン、③アセトアミノフェン
15−24歳:①アルプラゾラム、②イブプロフェン、③アセトアミノフェン
25−44歳:①アルプラゾラム、②インスリン、③アセトアミノフェン/オキシコドン
45-64歳:①インスリン、②ワルファリン、③アルプラゾラム
65歳以上:①ワルファリン、②インスリン、③クロピドグレル
全体:①ワルファリン、②インスリン、③クロピドグレル

個人的に衝撃だったのは、15-24歳くらいからオキシコドンがランクインしていることです。米国のオピオイド蔓延を示唆しますね・・・
ちなみにあまり見えていませんが、DOACもまあまあ上位にランクインしています。
ということで、皆様お気を付け下さい。