栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文ななめ読み:BJGP 10/4 診療の継続性と死亡・緊急入院・時間外受診/Long COVID-19に対する推奨/青年の長期抗菌薬処方について

論文ざっくりななめ読み。BJGPです。
British Journal of General Practice
今年度から家庭医療系のジャーナルも読み出しています。
この辺りはなかなか興味深いです。

 

bjgp.org

GP診療の継続性と死亡・緊急入院・時間外受診 ーノルウェイのレジストリ観察研究ー

 ノルウェイでも登録制のGP制度を採用している様で、北米ならではのNational cohortでのレジストリがある模様です。過去の研究でも継続性が患者アウトカムに与える影響ではポジティブな結果が複数見られていますが、今回はなんと最大15年以上の継続性を検討しています。しかもノルウェイの人口455万2978人をカバーしたかなり強固なデータベースです。
 今回比較したのは、継続性と死亡・緊急入院・時間外受診です。患者因子・医師因子両者を調整した多変量解析では、

①死亡
 継続1年   Reference
 継続2−3年  OR 0.92[0.86-0.98]
 継続4−5年  OR 0.90[0.84-0.96]
 継続6−10年  OR 0.85[0.80-0.91]
 継続11−15年  OR 0.81[0.75-0.86]
 継続15年<   OR 0.75[0.70-0.80]
②緊急入院
 継続1年   Reference
 継続2−3年  OR 0.88[0.86-0.90]
 継続4−5年  OR 0.83[0.81-0.85]
 継続6−10年  OR 0.80[0.79-0.82]
 継続11−15年  OR 0.79[0.77-0.81]
 継続15年<   OR 0.72[0.70-0.73]
③時間外受診
 継続1年   Reference
 継続2−3年  OR 0.87[0.86-0.88]
 継続4−5年  OR 0.80[0.78-0.81]
 継続6−10年  OR 0.76[0.75-0.77]
 継続11−15年  OR 0.77[0.76-0.78]
 継続15年<   OR 0.70[0.69-0.71]

長ければ長いほど効果絶大!すごいですね。
さらに2−3年でも継続すれば効果がある・・・
患者データやGP側のデータは本文をご覧下さい〜。

やはり専攻医には継続診療を経験して欲しいなあ。
もちろん医療制度が違うので日本にそのまま実装しにくいですけど、とはいえ凄いデータです。

 

Long COVID-19のスクリーニング・診断・マネジメント ーデルファイ法ー

 まだまだふわっとしているLong COVID-19について、33人の臨床医が35の推奨事項についてデルファイ法を用いて合意しています。自分も外来で少しずつ診ているところです。
 まあ、正直今回の推奨はやり過ぎ感があります。もう少し穏やかなところに落ち着いて欲しいなあと思いますね。これじゃ検査しまくりよ・・・

 介入による効果がよく分かっていないものをじゃんじゃん検査するのはお勧めしないです。

【スクリーニングについて】
①WHO基準に従ってCOVID-19と臨床診断された患者もしくは検査陽性患者で、症状が4週間以上続いた場合に、Long COVID-19を考える。(賛成 91%)


②複数の専門医がいる医療機関で、Long COVID-19管理の経験と知識のある医師が主導する必要がある。(賛成 94%)

③個別の治療計画・マネジメント・リハビリを複数の専門分野で評価して検討する。最初に医師主導の医学的評価と診断を優先し、理学療法や作業療法士の意見を含む関連医療専門家を補助として検討する(賛成 94%)

④Long COVIDクリニックは精神科主導で行うべきではない。精神科サポートはチームサポートするのに役立つかもしれないが、潜在的な臓器損傷を評価・マネジメントする専門知識を持っていない(賛成 97%)

⑤18歳未満の小児は、成人の症状や治療の違いについて知識があり、学校と緊密に連携している小児科専門家がいる医療機関で評価すべきである(賛成 100%)

⑥メンタルヘルスの問題が併存している患者においても、同等の医療を受けることができ、サービスからトリアージされるべきではない。(賛成 100%)


【診断について】
一般論:
Long COVID-19は除外診断であり適切に他疾患の関与を検討する(賛成 88%)

⑧徹底的な病歴・診察・検査を実施し、非COVID-19関連の診断を検討する。具体的には、血算・生化(腎機能・CRP・肝機能検査・甲状腺機能・HbA1c・Vitamin D・マグネシウム・ビタミンB12・葉酸・フェリチン)・骨検査を実施。(賛成 100%)

呼吸器:
⑨呼吸器症状のある人は、早い段階で胸部X線検査を検討する。一見正常でも呼吸器病変を除外できない。(賛成 96%)

⑩一般的な肺活量測定は正常でも、肺炎瘢痕・慢性肺塞栓症・微小血栓などによる障害がある可能性があり、呼吸器科への紹介を検討する。(賛成 100%)

⑪息切れのある人では、安静時および運動負荷後の酸素飽和度を測定し、低酸素症または運動時の彩度低下があるかどうか調査する(賛成 94%)

循環器:
⑫息切れ原因で心臓由来も考慮する(賛成 97%)

⑬D-ダイマー正常は、特に慢性期には血栓塞栓症を除外できないことに注意する。臨床的に肺塞栓症の疑いがある場合は、紹介が必要である。(賛成 97%)

⑭頻脈や胸痛のある患者では、心電図・トロポニン・ホルター心電図・心エコー検査を実施する。心筋炎と心膜炎は心エコー検査だけでは除外できない(賛成 91%)

⑮胸痛のある患者で、心臓エコーが異常なくても心臓MRIが心筋心膜炎と微小血管性狭心症の診断に繋がることがあり紹介する(賛成 94%)

⑯動悸や頻脈のある患者では、自律神経機能障害を考慮する(賛成 97%)

その他:
⑰蕁麻疹、結膜炎、喘鳴、不適切な頻脈、動悸、息切れ、胸焼け、腹部のけいれんまたは膨満、下痢、睡眠障害、または神経認知疲労のある患者では、肥満細胞症を考慮する(賛成 88%)

⑱仕事や社会的機能を妨げる様な認知障害のある患者では、神経認知評価を検討する(賛成 97%)

⑲関節腫脹および関節痛の患者では、反応性関節炎または新規膠原病の診断を検討し、必要に応じて検査・紹介する(賛成 97%) 


【マネジメントについて】
一般論

⑳活動後数時間から数日で倦怠感と症状の悪化を伴う場合、回復期の初期段階であり、ペース配分に注意するように説明し、休息の重要性を強調する(賛成 100%)。

㉑患者の回復についての考えを変更することをサポートし、長期に渡る段階的な仕事への復帰を考慮する(賛成 100%)。

㉒患者リソースを提供する。具体的には、運動後の症状悪化の管理、活動のペース配分、鍼治療等が含まれます(賛成 91% )。

㉓社会的処方、病気を認めること、経済的アドバイスなどの情報を患者に提供する。Long COVID-19と診断して病気認定するかどうかを患者と話し合う(賛成 97%)。

㉔臨床医は、Long COVID-19患者の職業状態を確認する(仕事中/無職、パート/フルタイム、学生)(賛成 100%)。

患者を定期的にフォローアップし、完全なBPSモデルおよび職業的観点から状態を監視する(賛成 97%)。

㉖新しい症状が出た場合には報告するように伝え、増悪・寛解があり得ることを伝える。(賛成 100%)

㉗Long COVID-19の臨床研究でのデータ収集を考慮する。(賛成100%)


専門性
㉘心臓症状のある患者は、心拍数を最大値の60%(通常約100〜110回/分)に制限し、運動を始める前に少なくとも心電図と心エコー図で評価する。この患者グループは心筋炎を患っている可能性があり、運動は不整脈や心機能の悪化のリスクを伴うため、監視下の運動負荷を検討する(賛成 91%)

体位性頻脈症候群(POTS)を含む自律神経機能障害については、最初に体位性頻脈、塩分、下肢圧迫、リハビリを増やすことを検討する。(賛成 94%)

㉚POTSがあり、非薬理学的療法が無効の場合、β遮断薬・イバブラジン・フルドロコルチゾンを考慮する(賛成 94%)

㉛肥満細胞症の可能性がある患者では、標準用量よりも多い抗ヒスタミン薬が使用され、効果不十分であれば、モンテルカストやアレルギー・免疫学の専門家への紹介を考慮する(賛成 100%)

㉜肥満細胞症の患者では副作用が出やすく、βラクタム抗菌薬、非ステロイド性抗炎症薬、コデイン、モルヒネ、またはブプレノルフィンで副作用が起こる(賛成 91%)。

㉝呼吸障害については、専門の理学療法や呼吸法・瞑想などの代替療法も検討する(賛成 78%)。

㉞PTSDによる苦痛、著しい気分の落ち込み、不安症状を示す患者では、メンタルヘルス評価を検討する(賛成 100%)。

㉟ビタミンC・ビタミンD・ナイアシン(ニコチン酸)・ケルセチンなどの市販のサプリメントが用いられるが、ナイアシンやケルセチンなどでは薬物相互作用に注意する(賛成 94%)。

とりあえず余病的に肥満細胞症とPOTSに注意ですかね〜。

 

プライマリケアにおける青年への長期抗菌薬処方 ー後ろ向き観察研究ー

 プライマリケアの抗菌薬研究もGP分野では盛んですねえ。抗菌薬耐性への懸念などの観点から、特に若年者の抗菌薬暴露は公衆衛生上の問題だったりします。今回はその実態調査というところです。

P:英国の青年〜若年成人(1979-1996年生まれ)で、CHIAにデータがある患者
E/C:抗菌薬暴露の有無
O:11歳〜21歳までの1000人年辺りの抗菌薬処方率、1年間の抗菌薬処方日数
T:後ろ向き観察研究
結果:
 32万722人の患者が、合計71万803回の抗菌薬処方を受けた。
 このうち 26.93%は28日以上の長期処方だった。 
 長期処方は2013年がピーク

 3割弱が1か月飲むってすごいすね。どうも多いのは皮膚科でのざ瘡に対する処方などがあるみたいで、そのプラクティスが流行った時期が合った模様です。
 やはり適応を通すというのは怖いですね〜。

 

プライマリケア領域の水疱性類天疱瘡に対する長期経口プレドニゾロン曝露 ー人口ベースコホートー

 これな〜。まさに冒頭の記載にもあるけど、2次医療機関で治療開始されてその後プライマリケア医が継続。やめ方分からないからずっと飲み続けるという流れになりますよね。
 実は経口と局所軟膏の効果が有意差がないことは、2002年のNEJMに報告されていて、特に高齢者では長期経口ステロイドのリスクが様々出やすいので注意すべきとされています。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

今回はそういった背景も踏まえて、プライマリケア領域でどのくらいステロイド曝露されているかを検証したNational cohortです。

P:英国の1700万人のプライマリケアカルテデータベースから水疱性類天疱瘡の患者3322人
E/C:経口ステロイド処方された割合・期間・用量
O:11歳〜21歳までの1000人年辺りの抗菌薬処方率、1年間の抗菌薬処方日数
T:前向き観察研究
結果:
 経口処方された患者は2312人(69.6%)
 曝露期間中央値は10.6か月
 71.5%が3か月以上、39.7%が1年以上、14.7%が3年以上、5.0%が5年以上、1.7%が10年以上
 最大用量は 74.4%で10mg/日以上、40.7%で20mg/日以上、18.2%で30mg/日以上、6.6%で40mg/日以上、3.8%が50mg/日以上

 飲んでますね〜イギリス。まあ、日本も同じですかね
 医原性リスクになりやすいことは十分知っておく必要がありますね。