栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文ななめ読み:JAMA 10/12 閉経後腟症状のある女性に対するフラクショナルCO2ガスレーザー/ COVID-19mRNAワクチン接種後の有害事象サーベイランス/米国のCOVID-19感染予測:ワクチン誘発抗体と感染誘発抗体を血液ドナーで比較/臨床的に安定している症候性COVID-19外来患者に対する抗血栓療法の効果:ACTIV-4B

論文ざっくりななめ読み。
今週のJAMAです。
一部面白そうなOnlineも入れていきます。

 

jamanetwork.com

閉経後腟症状のある女性に対するフラクショナルCO2ガスレーザー vs プラセボ

 閉経に関する膣症状は非常にコモンでプライマリ・ケア領域でも対応する可能性がある症状ではないでしょうか。推定有病率は40-60%なので、おそらく症状伝えない人も多いと思います。
 現在使用されているのは、非ホルモン性の膣潤滑剤や保湿剤、局所・全身エストロゲン療法ですが、効果が今ひとつだったり、乳癌患者で禁忌だったりするため、他の治療選択肢が必要とされています。
 フラクショナルCO2レーザーは観察研究での効果は証明されているものの、プラセボ対照のRCTはないため今回ランダム化比較試験が実施されています。

P:腟症状のある閉経後女性85人
  平均 57歳、閉経後 6-8年、性活動性 50-54%
I:フラクショナルCO2レーザー 4-8週毎
C:プラセボレーザー(最小エネルギー・通電しない)
O:症状重症度 VAS 0-100+外陰膣症状質問票  VSQ 0-20(12ヶ月後)
T:ランダム比較試験/オランダシドニーの三次医療機関
結果:
 症状重症度 VAS有意差なし
 外陰膣症状 VQS有意差なし
 QOLスコアも有意差なし   

 観察研究では効果があったかもとされていたレーザーが、偽レーザーと比較すると有意差が無かったという報告です。やはり手技はプラセボ効果が大きいので、シャム的な偽手技をコントロールに置かないといけないですね。

 

COVID-19mRNAワクチン接種後の有害事象サーベイランス

 ワクチンの安全性に関する懸念は色々示されていて、先週のNEJMはまさに心筋炎祭でしたが、今回は大規模サーベイランスがJAMAに報告されていました。

 対象ワクチンはモデルナ・ファイザーのmRNAワクチンで、合計1184万5128回(ファイザー 57%)が、620万人に投与されています。以下各種イベントの発生率をワクチン接種1-21日後と無関係な期間22-42日と比較しています。今回はまだ1回の人も多く中間解析です。
 検討したアウトカムは、TTP・脳静脈洞血栓症・横断性脊髄炎・脳炎/脳脊髄炎・心筋炎/心膜炎・静脈血栓症・ITP・痙攣・急性心筋梗塞・肺塞栓症・ベル麻痺・虚血性脳卒中・出血性脳卒中・TTS・虫垂炎・ギラン・バレー症候群・DIC・川崎病・ADEMです。

 注目されている疾患としては、心筋心膜炎ですが、この超大規模研究では有意差はついていませんが、2回目接種がまだ少ないので、2回目後に多い心筋炎を評価するのは早いタイミングな気がします。
 その他、どの疾患群も基本的に発症時期の違いでの発症頻度の有意な違いはありませんでした。もちろんこの期間での違いを比較するので良いのかは十分検討する必要はあります。アナフィラキシーも4.8-5.1件/100万人程度でした。

 どうでも良いですが、modernaが自動翻訳で(近代)となっていたのが受けました笑。

米国のCOVID-19感染予測:ワクチン誘発抗体と感染誘発抗体を血液ドナーで比較 2020.7-2021.5

 献血データの結果として、どのくらい抗体があるかを調査した大規模研究。S抗体とN抗体を感染かワクチン誘発かに用いている模様で、ワクチン・感染であればS抗体、感染のみならN抗体陽性になることから区別しましょうというところです。

 献血献体144万3519件を検証していて、経時的な変化を見ているのですが、2020.7月には感染誘発抗体の有病率は 3.5%[3.2-3.8%]だったのが、2020.12月には11.5%[11.1-11.8%]に増加し、2021.5月には20.2%[19.9-20.6%]まで経時的に増えました

 また、ワクチン開始に伴い、2021.5月の血清抗体有病率は83.3%となり、60%がワクチン誘発と考えられています。あれだけ感染爆発しても感染による抗体は20%だったと考えると、集団免疫ってほんと無理だったなあと改めて思います。

 

臨床的に安定している症候性COVID-19外来患者に対する抗血栓療法の効果:ACTIV-4B

 感染大爆発で在宅治療が叫ばれる中、自宅療養患者に対するDOACなどを予防的に投与するというプラクティスがみられていたように思います。ただ、ヘパリン系の抗凝固のCOVID-19に対する効果は一貫性のある結果は示されておらず、まだinconclusiveと思っておいた方が良いです。

 元来、VTE発症頻度は日本では欧米と比べて非常に低いこともあり、急性期病院でのVTE予防についてもPadua使ったりしながらも、基本ICUセッティングに限る形にしていた医療機関も多かったのではないでしょうか?一部欧米帰りの先生がそのままプラクティスを持ち込んだところではガンガン実施されているというのも見聞きします。当院は、血栓予防には消極的なスタンスを取っていますし、COVID-19診療においてもヘパリンはほぼ使用してきませんでした

 今回は、外来の安定した症候性COVID-19患者に対する外来で実施可能な抗血栓療法についてのRCTです。

P:症候性COVID-19患者で657人
  平均54歳、女性59%、入院 22人(3.3%)
I:アスピリン 81mg 1T/1x(n=164)、アピキサバン 2.5mg 2回/日予防量(n=165)、アピキサバン 5.0mg 2回/日治療量(n=164)
C:プラセボ(n=164)
O:複合アウトカム(全死亡・症候性静脈/動脈性血栓症・心筋梗塞・脳卒中・心血管/呼吸器疾患による入院)
T:ランダム比較試験
結果:
【心血管系複合アウトカム】
 アスピリン 81mg群:0.7% 1人
 アピキサバン予防量群:0.7% 1人
 アピキサバン治療量群:1.4% 2人
 プラセボ群:0.7% 1人
【出血イベント】全て合わせると
 アスピリン 81mg群:4.2% 6人
 アピキサバン予防量群:6.7% 9人
 アピキサバン治療量群:9.1% 13人
 プラセボ群:2.2% 3人

 イベント率が低すぎて途中で早期中止となった研究です。症状があっても外来で治療できるレベルの方には血栓イベントはそれほど怖れるようなモノではありません。また、出血はmajorなものはないけれど、血栓イベントよりは明らかに多いことを考えると、これをルーティンで投与して予防していくというのは得策ではないでしょうね。