栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文ななめ読み:NEJM 10/14 HFpEFに対するエンパグリフロジン/自閉症スペクトラム小児に対する鼻腔内オキシトシン/医療従事者におけるCOVID-19ブレイクスルー感染

論文ざっくりななめ読み。NEJMです。
今週は先にオンラインで出ていたHFpEF対象のSGLT-2が出てきています。
色々突っ込みはありますが、この領域のGame changerであることは間違いないでしょう。

 

HFpEFに対するエンパグリフロジン

 これ、夏の終わりに一度読んでいたのですが、ブログでは初紹介ですね。エンパグリフロジンと言えば、SGLT-2阻害薬の先駆けとして糖尿病患者の死亡・心血管イベントを減らすという衝撃の研究でデビューした薬剤です。その後このクラスの薬剤は快進撃を続けてきており、糖尿病の有無にかかわらず心血管・腎臓アウトカムを改善し続け、EF低下しているリスクの高い患者では標準治療の一画に名乗りを上げています。
 一方で、心不全の半数を占めると言われているHFrEFに対する効果的な薬剤はなかなか出ないまま、塩分制限を含む生活習慣と血圧・ボリュームコントロールを中心に対処してきたわけですが、今回ついにHFrEFにSGLT-2阻害薬がどうか?という問いをランダム化比較試験で検証!という段階に相成りました。

P:NYHAⅡ〜Ⅳの心不全患者で EF≧40%以上 5988人
  23ヵ国622センター、糖尿病患者は半数、eGFR<60ml/minが半数
  EF 50%以上が2/3、平均 54%
I:エンパグリフロジン 10mg/日 1回/日
C:
プラセボ
O:心血管死亡または心不全による入院の複合アウトカム
T:ランダム化比較試験
結果:
 平均フォロー 26.2か月
 エンパグリフロジン 415/2997人(13.8%) プラセボ 511/2991人(17.1%)
 HR 0.79[0.69-0.90]

さて、突っ込みどころはどこでしょうか?と専攻医に聞いたりしますが。
 一つは複合アウトカムなので、アウトカムの内訳としてはほとんど心不全入院の減少が占めていて(エンパ群 259人、プラセボ群 352人)、心血管死亡ではエンパ群が低い傾向はあるが有意差はつきませんでした。まあ、サンプルサイズの問題か?
 あとは、サブ解析みると、EFが上がるほど有意差がつかなくなり、≧60%で有意差がなくなることから、「HFpEFに効く!」というのはやや言い過ぎで、HFmrEF(ややこしいですが)に効く位かなあと思いました。ただ、興味深いのは数は少ないもののアジア人では有意差を持って効果があること、肥満がない方が効果があることも興味深く、これらは交絡しているかもしれませんが朗報だなあと思いました。


自閉症スペクトラム小児に対する鼻腔内オキシトシン

 あまり詳しくは無かったのですが、自閉症小児に対するオキシトシンの効果って以前から指摘されていたようですが、今回鼻腔内投与が検証されています。

P:自閉症スペクトラム障害 3-17歳の290人
I:オキシトシン鼻腔投与群
C:
プラセボ群
O:ABC-mSW(修正引きこもりスケール)
T:ランダム化比較試験
結果:
 オキシトシン群 -3.7、プラセボ群 -3.5、有意差なし

オキシトシン点鼻は残念ながら効果が無かったとされています。
この辺は先行研究の結果とも異なっておりまだまだ検討打開といえるかもしれません。



医療従事者におけるCOVID-19ブレイクスルー感染

 これもまたイスラエルからの報告です。すごいなイスラエル!BNT162b2ワクチンでは有効性が高いけれどブレイクスルー感染も報告されていて、その実態を明らかにするために報告するとあります。

P:ワクチンを完全に接種した医療従事者1497人
E/C:ブレイクスルー感染の有無
O:探索的(中和抗体価等)
T:症例対照研究
結果:
 ブレイクスルーを起こした患者は39人で、感染期間周囲の中和抗体価が低かった。
 Ratio 0.361[0.165-0.787]
 中和抗体力価が高いと、感染力が低い(Ct値が低くなる)ことと関連していた
 ほとんどのブレイクスルー感染は軽症〜無症状だが19%で6週間症状残存

中和抗体の抗体価が192.8と533.7と有意に違いましたね。
これ、今後ワクチン接種も中和抗体価を測定して下がってきた人は打つみたいな流れになっていくんでしょうか。
ブレイクスルー感染のイラスト(男性)