栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

CQ:膵酵素正常の膵炎ってどのくらいある?

調べるきっかけ

 最近、専攻医から膵酵素正常の膵炎について相談を受ける機会が立て続けにありました。にわかに膵酵素正常の膵炎が盛り上がっておりましたが、実際どの程度あるのだろうか?という疑問が出てきました。

 言われてみれば、それほどたくさん診たという訳ではありません。というかほぼ経験無いかなあ?・・・と言うわけでこの界隈の疑問を調べて整理しておきたいと思います。

 

膵酵素正常の膵炎ってどのくらいある?

①二次文献:

【Uptodate】

 ひとまずUptodateやDynamedを見てみると、Uptodateには

「血清アミラーゼは症状発現から6-12時間以内に上昇」
「血清アミラーゼの半減期は約10時間」
「合併症のない発作では3-5日以内に正常に戻る」

と記載されています。
特に、Etiologyとしては、アルコール性膵炎の20%、高トリグリセリド血症関連膵炎の50%が血清アミラーゼ正常上限の3倍は超えないと言われています。

一方、血清リパーゼについては以下が記載されていました

「血清リパーゼは症状発現から4-8時間以内に上昇」
「24時間でピークに達する」
「8-14日以内に正常に戻る」

と記載されていました。リパーゼはアミラーゼと異なり、尿細管で再吸収されるのがこの違いを生むのだそうです。この辺りが検査感度の違いに繋がっていて、アミラーゼよりはリパーゼ測定が推奨されています。

とはいえ、頻度についてはよく分かりませんでした。ちなみにDynamedにはあまり記載がありませんでした。

 

②原著:

 頻度を見たいなあと思っていたら、以下のBMJ OpenのRetrocohortが見つかりました。これは英国NHSの急性期病院に入院した急性膵炎患者の膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)の結果を示しています。

bmjopen.bmj.com

 この報告ではEtiology毎に膵酵素の評価をまとめていますが、合計117人の急性膵炎患者の中で、アミラーゼ・リパーゼ正常は・・・

・胆石性膵炎(n=51)     2人(4%)
・アルコール性膵炎(n=22)  0人(0%)
・その他の誘因(44)     2人(5%)

と言う結果でした。4/117人(3.4%)程度という感じです。まあ、それなりにレアな状況ですね。ちなみに蛇足ですが、膵酵素が両方上昇しているのに膵炎ではなかった疾患として、大動脈瘤破裂・十二指腸潰瘍穿孔・小腸閉塞などが報告されています。

 

もちろん、完全に正常な症例もあるでしょうし、採血タイミングの問題も多いだろうなあとは思いましたが、なかなか面白いですね。

 

まとめ

・膵酵素正常の膵炎は頻度としては5%未満とまずまず稀
・膵酵素の時間経過は理解しておく